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「フランス/パリ滞在質問箱」に時折割り込んで掲載(第11回)  私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」(第11回)

「フランス/パリ滞在質問箱」に時折割り込んで掲載(第11回) 
私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」(第11回)

バカロレア(BACCARAUREAT) の公平性・匿名性、そしてフランスの受験戦争キーワード
「コンクール、グランゼコール、アンジェ二ユール」に触れて


前章(第10章=第10回)で、長男の中学・高校進学事情で「知らなかった」「分かっていなかった」に触れました。これは、学校選びの実情、実態が分かっていなかったということです。外国人(日本人)の親として、子どものフランスでの学校教育にどう対応していくか。この基本には直接関係しないことでした。それでは、基本的なこととは何か。日本人の父親はフランスでの学校教育にこんな見方をしていました。もちろん、幼、小、中、高校、大学のすべての学校教育を日本で過ごしてきた日本人父親の見方です。二人の息子の学校教育を一貫してフランスの公立校で消化し、社会人となった今では、細かい点で多少の修正は必要ですが、本筋では変わりありません。
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フランスの大学はすべて国立であって、募集人員、座席数を競う入試がありません。日本のように入試が難しい一流大学、難関大学があるわけではありません。大学格差が基本的に存在しないことになっています。パリ大学が一流大学で、地方都市の大学( 注1 )はやや落ちる、ということではない。BACCALAUREAT(バカロレア)、,略称BAC(バック)と呼ばれるフランス全土一斉試験に合格すれば原則、希望の大学(UNIVERSITE)、希望の学部(FACULTE)に登録はできます。LICENCE(学士/3年教程)、MASTER 1(前期修士1年教程、MASTER 2(後期修士1年教程)、、、、、と進級できるかどうかは本人のその後の努力次第でしょうが、BACさえ取得すれば、大学で学ぶ資格は得られます。
フランスの大学には入試がない、日本と比べれば学費も無料同然( 注2 )という事情から、日本では難関とされる医学部に登録するBAC取得生が後を絶ちませんが、これについては後段に回します。 

( 注1 )一例として南仏のモンプリエ大学(UNIVERSITE MONTPELIER)の医学部。12世紀の創立、ヨーロッパ最古の医学部(の一つ)とされ、伝統を誇っています。

( 注2 ) 2017/2018年度の学費(年間)は以下のようです。
  学士(LICENCS)課程       184ユーロ
  修士(MASTER)課程       256ユーロ
  博士(DOCTORAT)課程     391ユーロ
  医学(MEDICALE)課程      512ユーロ
  GRANDES ECOLES(理工系)  610ユーロ
  (グラゼコール)
学生健康保険           217ユーロ
雑費                  50ユーロ

1ユーロ=130円で換算すると、医学課程で67000円見当(年間)になります。    

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大学入試がないこと、これはLYCEE(リセ・高校)進学にも関係してきましょう。入試がない、従って大学格差がないのが前提ですから、「一流高校」の意味がないとはいいませんが、薄い・弱いということです。確かに、世評や進学雑誌ではLYCEE(リセ・高校)をBACの合格率からA、B、C、Dにランク付けをしていますが、AとBの差は微差です。五十歩百歩です。そもそもBACの合格率が長男の時期は75-80%、次男の時期は80-85%(現在は90%前後)です。
BACの仕組みは複雑ですが、必修科目、選択科目、任意選択科目の平均点(傾斜配点です)が20点満点の半分10点以上で合格。ランクAのLYCEE A校のA君の平均得点12/20、ランクBのLYCEE B校のB君の平均得点15/20。 どちらが好成績かは言を俟ちません。
BACという一律テストによって、ランクA、Bの学校格差は消えてしまいます。BACの公平性ということでしょう。

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在仏日本人会事務局に勤務していた時期にフランス人大学生から履歴書( CURRICULUM  VITAE/ 略称CV )を受け取ることが多々ありました。日本語・日本文化、日本の経済などを専攻する学生からの研修(STAGE)の申し込みです。貴局に研修ポストがなければ、貴会傘下の日系企業 ( 余談 1 )にご紹介いただけまいか、という依頼です。あたりまえのことですが、必ずCVが同封されています。
それに目を通すと、LYCEE名が記されていません。日本のように「XXXX年X月 A高校卒業」がありません。その代わりに、 ****年 BAC SERIE S(L, ES) と記されています。XXXX年にバカロレアのSを取得したということです。SはSCIENCE理数系です。LはLETTRE文系、ESがECONOMIQUE SOCIAL経済社会系。 どこのLYCEEを卒業したか、どこのLYCEEでBACを取得したかは全く意味がありません。文系、理数系、経済社会系、技術系、、など、どのSERIE(専攻コース)の
バカロレアを取得したかだけです。在学していたLYCEE名が問われない、問う意味がない。
BACの匿名性ということでしょう。

( 余談 1 ) 本来は「在仏日本商工会議所」が「紹介の労」の窓口でしょうが、在仏日本人会も日系企業約250社が法人会員として会員登録していることから、「研修(STAGE)先の紹介の労」の依頼が時折迷い込むのでした。1980年代―1990年代初頭のほぼ10年間は在仏日本社会にとってもバブル期。「日本人はお金持ち」「日本の会社はお金が余っているハズ」でした。「南仏の別荘を日本人に買ってもらいたい」「お城を日系企業に売りたい」。不動産売買の情報が飛び交っていました。
星付き有名レストランAの「営業権(FONDS DE COMMERCE)売ります」では、オーナーシェフの夫婦
ゲンカにまきこまれ(そうになっ)た一幕もありました。
代理人の不動産屋Bさんが訪ねてきて「レストランAのFONDS DE COMMERCE(営業権)を日本人に売りたい」のプロポーズを受けました。日本人会会報のPETITE ANNONCE(プティタノンス)欄に「売り・レストランAの営業権」を掲載したのです。店側に問い合わせが殺到したのでしょう、レストランAのPATRONNE(女性店主)から電話が入りました。えらい剣幕でした。
「一体誰に依頼されて売り広告を出したのですか。不動産屋のBでしょう。あのB野郎、ウチの亭主をダマくらかして、、。ウチの亭主もだらしがなさ過ぎます。ちょっと体調を崩したくらいで弱気になっちゃって。 店は売りません。絶対に売りません。広告をすぐ外しなさい。外さないとあなたを訴えますよ」
ウチの亭主というのは、レストランAのオーナー・シェフAさんです。フランス料理には門外漢の僕でも知っている名前でした。おそらく「売る、売らない」の壮絶な夫婦喧嘩になったことでしょう。

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このBACの公平性、匿名性を大きく揺るがした事件がありました。2004年末から2005年春にかけてのことです( 注3 )。
時の教育相は、2017年の大統領選第1回目の投票で一敗地にまみれたフランソワ・フィヨン(FRANCOIS FILLON)さん(余談 2)。 フィヨンさんのBAC改革法案は、大筋でこういうものでした。
現行のBAC試験科目10-12教科を5-6教科に半減し、在籍しているLYCEEでの日頃の学習態度や学内試験での成績も加味して合否を判定しようというものでした。内申点の導入です。
その狙いは「日頃の堅実な学習が大切」「試験科目数の半減によって、受験生(高校三年生)の「BAC一律一斉試験の負担軽減」。そして「負担軽減」による「BAC合格率のアップ」ということです。
BAC実施費用の軽減もあります。この時期の受験者総数は63万4000人(2017年度は71万8000人)。4万人強の監視教員を動員し、採点教官は13万人、必要コピーは400万枚といいます。試験科目数を半減すれば人件費の削減も期待できる。こんなフィニョンさんの改革法案でした。
この改革法案に高校生たち(LYCEEN/リセアン) から強烈なクレームがついたのでした。内申点を導入すればBACの匿名性が壊れる。LYCEEの多くはは自校のBAC合格率を高めたいので内申点を甘く」するであろう。このことはLYCEE「A」で取得したBAC, LYCEE「 B」で取得したBAC、LYCEE 「C」で取得したBAC、、、、になろう。一流校BAC、二流校BAC 三流校BACの格差を生むことになり、BACの公平性、匿名性を損なう。
反対のデモはパリ、マルセイユを中心にフランス全土に広がり、最高動員は10万人に及んだ、とされています。フィヨン教育相は改革案を引っ込めて2005年5月31日付けで教育相のポストを降りました。


( 注3 )次男坊のBACは2002年に終わっていたので、父親としては、正直なところ、高見の見物でしたが、反対運動の動きは興味深く追っていました。反対運動の主導は高校生組合です。FIDL(FEDERATION INDEPENDANTE et DEMOCRATIQUE LYCEENNE/民主独立高校生連合)とかUNL(UNION NATIONALE LYCEENNE/全国高校生同盟)とかの組織名も初めて知りました。FIDLが社会党左派系、UNLが中道系であるとかもついでに知りました。

( 余談 2 )フランソワ・フィヨン(FRANCOIS FILLON)さんの大統領選での落選は、ペネロプ(PENELOPE)夫人(と子どもたち)への議員助手手当という架空給与がCANARD ENCHAINE紙(キャナール・アンシェネ=鎖につながれたアヒル)にスッパ抜かれたことでした。夫人の名前がペネロプ(PENELOPE)であることも皮肉でした。いうまでもなく、ペネロプ(PENELOPE)は、ホメロスの叙事詩「オデッセイ」の主人公オデッセイの妻です。トロイ戦役に出た夫の留守を守り、その帰還を待つ「貞淑な妻」です。ペネロプ(PENELOPE)は「貞淑な妻」の代名詞です。
在仏日本人会に勤務していた現役期に日本の外務省筋から頼まれたことがあります。
フランスの退役外交官の夫人たちが中心になって活動しているASSOCIATION PENELOPE(ペネロプ協会)という組織がある。手造りの小物、細工物をバザーなどで販売して、その売り上げを各種の慈善団体、救済組織に寄付している。このASSOCIATION PENELOPE(ペネロプ協会)の活動を在仏日本人会として応援してくれまいか、の依頼でした。
退役外交官の夫人たちが、このASSOCIATIONにペネロプ(PENELOPE)の名前を冠したことに妙味ある命名だなと思ったものでした。
さて、フィヨン・ペネロプさんです。日本へ一時帰国した折りのことです。とある場所でペネロプさんの手紙を見たことがあるのです。フランソワ・フィヨンさんは、2007年5月-2012年5月までの5年間、首相(PREMIER MINISTRE)を勤めていますが、その間に3回、日本を訪問しています。夫人同伴ですから、その際のことでしょう。
ところで、僕には鎌倉に住んでいる兄がいて、一時帰国の際には兄宅に転がり込んでいます。兄は行きつけの天麩羅屋に、ほぼ毎回、招待してくれるのでした。ある回のこと。廊下を通ってトイレに向かうと、その廊下の壁に手紙が貼ってあります。何んだろうと顔を寄せて目を凝らと、それはフランス語で書かれた手紙でした。大いに関心をもって、その手紙の主を確認するとペネロプ・フィヨンとあります。
「美味しい天麩羅をありがとうございました。大いに堪能しました」の礼状でした。
店主に質しますと「フィヨン夫人がフランス大使館の方々と見えたのです。その後、しばらくして、礼状をいただいたので、ああして貼っています」。時を経て2017年春、大統領選中に、架空給与スキャンダルでペネロペさんの顔がTVに映し出される度に、鎌倉の天麩羅屋に貼られていた手紙を思い出したものです。

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子どもの進路、進学情報に関わって、覚えたことがいくつかあります。その一つがコンクール(CONCOURS)です( 余談 3).。コンクールは英語ではなくフランス語なのでした。 定員、定席数を競うのがコンクール(CONCOURS).。BACはコンクール方式ではないということです。
前述したように20点満点の10点以上が合格です。これはコンクールではなく、EXAMEN(試験)です。
フランスの大学入学も同様にコンクール方式ではない、といえます。
それでは、フランスの高等教育(L‘ENSEIGNEMENT SUPERIEUR)にコンクールはないのか。
あります。
その二つ、GRANDES ECOLES(グランゼコール)です。コンクールを経てGRANDES ECOLES(通常、3年制)を卒業したらどういうことになるのか。
その三つ。INGENIEUR(アンジェ二ユール)というDIPLOME(ディプロム・資格)が与えられます。INGENIEUR(アンジェ二ユール)はエンジニア(ENGENEER)を想起させますが、日本での「あの人はエンジニアで、技術畑を長く歩いてきた人」とはいささか趣きを異にしています。

INGENIEUR(アンジェ二ユール)は、高等教育・研究省(MINISTÈRE DE L’ÉDUCATION NATIONALE, DE L’ENSEIGNEMENT    SUPÉRIEUR ET DE LA RECHERCHE が認定したECOLE D’INGENIEUR(技術系グランゼコール/3年制)が発行できるDIPLOME(ディプロム・資格)です。

Arrêté du 26 janvier 2017 fixant la liste des écoles accréditées à délivrer un titre d’ingénieur diplômé
INGENIEUR(アンジェ二ユール)のDIPLOME(ディプロム・資格)を発行できる学校リストがJOURNAL OFFICIEL(政府公報、官報)に発表されます。最近では2017年1月26日省令で発表されています。
上記のフランス文がその省令です。

INGEENIEUR(アンジェ二ユール)と同ジャンルの称号としてTECHNICIEN(テク二シャン)があることも教えられました。INGENIEUR(アンジェ二ユール)もTECHNICIEN(テク二シャン)も日本語にすれば技師、技術者です。しかし、INGENIEUR(アンジェ二ユール)のDIPLOME(ディプロム・資格)を取得するにはかなり険しい道を歩かされます。
まず、BAC取得後に通称PREPA(プレパ)、正確にはCPGE(CLASSE PREPARATOIRE AUX GRANDES ECOLE)で2年間、悪戦苦闘することになります。日々、筆記試験、口頭試問の訓練に追われ、徹底的に絞られます。
次いで、ECOLE D’INGENIEUR(技術系グランゼコール)の熾烈なコンクールに挑戦して勝ち抜かねばなりません。
フランスには確実に受験戦争があるということです。
このあたりの実情を追々記していきましょう。僕は父親であって受験戦士自身ではありません。
フランスにおける受験戦争観戦記といった趣きになりましょう。

(余談 3)コンクールといえば、日本国内では児童絵画コンクール、書道コンクール、コーラス・コンクール、、、などが印象に残っています。国際コンクールでは、ショパン国際ピアノコンクール、チャイコフスキー国際コンクール、ロン・ティボー国際コンクール、エリザベート国際音楽コンクールなど。いずれも音楽系のコンクールで、誰もが知っている耳慣れたコンクールですね。最近では、ローザンヌ国際バレエ・コンクール。但し、正式名称はLe Prix de Lausanneとあります。いずれも日本勢が敢闘しています。
これらが耳慣れたコンクールですが、
例えば2017年9月16日付JOURNAL OFFICIEL(政府公報・官報)の内務省令にこうあります。

Arrêté du 30 août 2017 portant ouverture des concours externe, interne et du troisième concours d'assistant territorial d'enseignement artistique principal de 2e classe, spécialité « musique », discipline « guitare » (session 2018), par le centre de gestion de la fonction publique territoriale de la Savoie
サヴォワ県庁での音楽指導員(ギター)の採用のようです。ouverture des concours(コンクールの開始)とありなす。

例えば2017年9月20日付JOURNAL OFFICIEL(政府公報・官報)の内務省令にこうあります。
Arrêté du 8 septembre 2017 autorisant au titre de l'année 2018 l'ouverture d'un examen professionnel d'accès au grade de contrôleur de classe supérieure des services techniques du ministère de l'intérieur
こちらは、昇級、昇格試験のようでouverture d'un examen(試験の開始)です。

CONCOURSとEXAMENの違い、これも子育てで学んだフランス語でした。

2017年10月04日    記     岡本宏嗣
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