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「フランス/パリ滞在質問箱」に時折割り込んで掲載(第10回)  私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」(第10回)

「フランス/パリ滞在質問箱」に時折割り込んで掲載(第10回) 
私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」(第10回)

「知らない」は強い?
長男は、幼稚園(区立)を終えて、区立A小学校(5年制)に進学しました。A小学校は通学距離が徒歩で5分。
拙宅アパート(1階。日本での2階)の窓からはA小学校の中庭の一部が見えるのでした。お昼休みには、CANTINE(キャンティン・給食)を終えた子たちが、この中庭で声をかけ合いながらボール蹴りをしていて、その様子がアパート棟群の隙間から覗けるのでした。始業ベルが鳴ると、子たちが教室に引き上げて、中庭の喧噪が静まる。そんな光景を拙宅アパートから時折目にしていました。
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小学校5年生の時期です。新学期(9月)の慌ただしさもおさまった10月頃のことだったでしょう。5年生は小学校の最終学年、来年は中学校(4年制)へ進学です。長男から久々にクラスメイトの近況を聞きました。
「ホラ、お母さんがX銀行Y支店に勤めていて、お父さんがZ通りだったかな、COIFFURE(コワフール・理容院)をしている、、、」
「ステファンでしょう。ステファンならもういないよ。引っ越したみたい」
こんな調子の会話です。Aは? Bは? Cは?、、と思いつくままに質していくと、
「来ていない。引っ越ししたらしい」
「去年からいない。PRIVE(プリヴェ・私立校)に移ったらしい」
「知らない。来ていない」 「わからない。来ていない」
こんな答えが多いのですね。
子供の年齢は、10―11歳です。この年齢期の子を持つ家庭には、転勤、転職が集中するのかな、と思ったりしました。マイホーム購入の時期でもあるかもしれない。となれば、パリ市内は高いので、パリ郊外に物件を求めることになり、引っ越しする家庭も多いでしょう。それにしても、居残っている生徒は、スペイン人家庭、ポルトガル人家庭、ユーゴスラヴィア人家庭、そして我が日本人家庭、、、。 なんとなく外国人家庭が多いようだ、の印象が残りました。
                        
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それはさておき、長男はA小学校(5年制)を終えて、公立のB中学校(4年制)に進学。現住所からB中学校が指定され、選択の余地はありません。
さらに、B中学を終えて、公立のD高校へ。高校をLYCEE(リセ)といい、3年制です。LYCEE進学に入学試験はありません。第一志望校から第三志望校まで3つのLYCEEを提出することが出来ます。入試はなく中学校期の成績による審査だけです。
LYCEE DでBACCALAUREAT(バカロレア/大学登録資格試験=高校教程修了資格試験)を終えて公立LYCEE Eの通称「プレパ」に進みました。「プレパ」とは、CLASSE PREPARATOIRE AUX GRANDES ECOLES(CPGE)、英訳するとPREPARATORY CLASS FOR GREAT SCHOOLとでもなりましょうか。GRANDES ECOLES(グランゼコール)は、UNIVERSITE(大学)とは違った進路ですが、ここでは触れません。いずれ、後章で詳しく触れます。
長男は、このLYCEE E のプレパ・クラス仲間たちとの雑談で、日本語に直せばこんなことをいわれたそうです。
「B中学!あんな中学校から、よくここまで這い上がってきたな」
長男が4年間通ったB中学校が、世評で「あんな中学」だったとは「知らなかった」ことでした。
さらに、はるか後年になって「あんな中学校」と評される実情を突き付けられることになります。
「そういうことだったのか、知らなかった、知らないことは強い」。どういうことか。こういうことです。
              
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 僕には1984年12月生まれの次男がいます。長男とは11歳違います。次男も長男と同じA小学校に通い、
中学校に進学する時期なりました。長男の時期には「知らなかった」情報が、今回はしっかり入ってくるのでした。
A小学校からは、B中学校、C中学校、D中学校の3校のいずれかの配属になる。いずれの配属になるかは、家庭の住所による。そして、C中学、D中学は周辺の環境も良く、優良中学とされている。B中学だけが不良校とされているのでした。B中学は辛うじてパリ市内に位置するものの、校舎の背後に流れるセーヌ川を渡れば隣県です。県境に位置しています。場末といいますか。隣県からは「なんとかパ市内の学校に入りたい」で、あの手この手を打って越境入学してきます。一方、パリ市内の家庭も様々な手を打って、別の学校区に脱走を試みるのでした。あるいは私立校に転校するのでした。
今から10年近く前、長男からクラスメ―トの近況を聞き出したことを思い出しました。
「来ていない。引っ越ししたらしい」「いない。PRIVE(プリヴェ・私立校)に移ったらしい」「知らない。来ていない」 「わからない。来ていない」
この意味が、10年後の今、ようやく明瞭になりました。そういう事情だったのです。B中学に配属になる家庭が逃げ出したのでした。「そういうことだったのか、知らなかった、知らないは強い」がこれです。

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「あんな中学」は単なる風評だけではないことも知りました。B中学校はZEP(ZONE D’EDUCATION PRIORITAIRE)地域内の中学校ということでした。ZEPとは、教育特別指定地域です。治安が悪く、風紀が乱れている地域とされ、保護・監視が必要な小学校・中学校・高校ということです。低所得層の家庭が多い、学力は低迷、校内外での暴力沙汰が発生しやすい。特別予算をつけて教員数を多くし、給与額も割り増しとする。さらに屈強な補導員も配置して対応する。そういったことが必要とされる小・中・高校です。
つい最近、2017年1月中旬のことです。ZEP指定校は小・中学校にとどめ、高校を別枠にしようという教育省の「ZEP見直し」の動きが出てきました。早速、「ZEPは必要だ」「ZEP予算を削るな」のプラッカードを掲げたデモ行進がパリ、マルセイユを中心に全国主要都市であったのでした。高校生、教員などによる「ZEP見直し」反対デモです。予算を削られる、特別手当がカットされる、あるいは減額になる。これではZEP地域校に志願する教員がいなくなってしまう。ZEPは必要な制度なのだ、という主張でしょう。
話を戻します。にもかかわず、次男は「あんな中学校」でありZEP指定中学校のB中学に進学し、4年間を過ごしました。その4年間、B中学校では校内外の事件が起きたことはなかったようです。11年前、長男の在学4年間にも不都合な事件は起きていません。ZEP指定地域校だから学校側の防備も堅い(のでしょう)。それで事件が起きなかったかもしれません。
                             
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次に長男が3年間通ったLYCEE D です。LYCEE Dは旧制度ではLYCEE FEMININ(女子高校)だったといいます。
それは一向に構わないことでなのですが、「知らなかった」ことでした。
後年、それを知って、思い出したことがありました。日本それも東京でのことですが、僕の中・高時代には現都立OO高校(旧府立第X高女)がありました。旧制高女は新制になっても女子教育の伝統と校風が受け継がれているようで、世評では女高男低の趣きでした。実際のところは知りません。また、その後の変遷も知りませが、僕の中高時代は、そんな傾向、世評があったのでした。
ここはフランス/パリですが、LYCEE Dが旧制女子高だったと聞いて、瞬時、現都立OO高校(旧府立第X高女)を想起したものです。そういえば、、LYCEE DにはCLASSE A HORAIRES AMMENAGES MUSIQUE(CHAM/音楽生のための授業時間調整クラス)が2クラスほど設置されていました。、LYCEE Dと至近距離に高等音楽院がありました。午前中にフランス語(国語)、外国語、数学、物理化学、歴史地理などの通常科目の授業を終え、午後からは高等音楽院で音楽を学ぶという調整クラスです。調整クラスには女子学生が多いようでした。長男は音楽生ではありませんでしたが「欠員がある」とのことで、調整クラスにもぐりこんだものです。そのため「午後が広々と開いている」ので「図書館で勉強に集中できる」とのことでした。
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長男の小学校(5年制)、中学校(4年制)、高校(3年制)の時期には「知らなかった」「見えなかった」ことが、10年後の次男の時期にようやく見えてきたのでした。

2017年8月19日 記   岡本宏嗣
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