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「フランス/パリ滞在質問箱」に時折割り込んで掲載(第3回)  私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」

これはブログ「フランス/パリ滞在質問箱」ではありません。
「フランス/パリ滞在質問箱」に時折割り込んで掲載(第3回) 
私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」

第3回 未熟児(PREMATURE・プレマチュレ(2) 
              
長男の名前「まるろ」についてひとこと。前章で「カタカナのマルロではなく、ひらがなの“まるろ”がいい。マルローの音だけをもらおう」と書きました。MALRAUXは日本ではカタカナで「マルロー」と記されています。「マルローの音だけをもらおう」は正確ではないでしょう。「マルロー」をひらがなで「まるろ」にしただけのことです。
「まるろ」をヘボン式でローマ字表記するとMARUROになります。MARUROからMALRAUXを想起するフランス(語)人は皆無でしょう。両者は、スペルも発音も全く違う別世界の言葉のようです。MARUROには日本(語)人―ここでは父親の僕、母親の家内ですが―が苦手とする「R」が二つ入っています。MALRAUXには「L」と「R」が続いています。「L」と「R」は全くの別音で、「LR」と続く音の発声は日本(語)人にはなかなか難しい。フランス(語)人はMARURO、MALRAUXの発声を自在に使い分けますが、僕たち日本(語)人には困難です。「まるろ」と「マルロー」は日本語としては音声的に、発声的に同じで、ひらがなとカタカナの視覚的な違いしかありません。フランス語のMARUROの「RURO」は舌をねじったり唇をすぼめたりしないと出ない音です。そんな無理をして自分の息子の名前を呼ぶ親はいないということです。
当人はどうなのか、「まるろ」と「MARURO」の全くの別音をどう扱っているのか、質したことがあります。両親や日本の親族には日本語発音の「まるろ」、フランスの学友や友人などにはフランス語発音の「MARURO」の使い分けをしているといいます。相手によって自動的、無意識的に音声スイッチが切り変わるのだそうです。  
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日本では別の事情が介在して来ます。「まるろが幼稚園を終えて、この9月新学期から小学生です」と書き送っても「未熟児で誕生したマルロー君がもう小学生ですか。進学、おめてとう。」の返事が戻ってきます。この事情は、何年経ってもかわりません。「この度、ロンドン在住の長男まるろが、その地で嫁さんを見つけて結婚しました」のメール報告には「マルロー君が結婚しましたか。一昨年、東京で会った折には適当な相手がいないような口ぶりでしたが、おめでとうとお伝えください」です。僕の年代には、それほどマルローの知名度が高い、ということでしょうか。「まるろ」が日本人の名前として目にも耳になじまない、「マルロー」しか想起させないということなのでしょうか。
ここらあたりで入り組んだ名前談義、発音談義は終わりにします。今後は長男とします。
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約2か月後。長男は産院の特定集中治療室を出ました。体重は1500グラム見当増えて、退院時は2750グラム見当でした。退院時には小児科医による体重の増加促進のための乳児食特別メニューが指示されました。メニューはCARNET DE SANTE(健康手帳)に走り書きされたもので、失礼ながらミミズののたくり、判読不能なので薬局(PHARMACIE)で解読してもらったのでした。
粉ミルクは銘柄が指定され、いくつかの添加ジアスターゼを加える、ということでした。4-5種類のジアスターゼの指示あり、それを同時にではなく、1日数回の授乳の際に、ジアスターゼAは毎回、それにジアスターゼBを加える、次回の授乳にはC,次々回はD、、、、を加えるローテーション方式なのでした。
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余談になります。1975年8月のことです。長男は、この時期にはまるまると太って、未熟児ならぬ過熟児になっていました。たまたま日本の新聞を読んでいたらこんな記事が目に入りました。加山雄三・松本めぐみ夫妻のお子さんが未熟児で誕生し、産院の特定集中治療室に預けたまま旅行に出かけた、親として無責任ではないか、の非難が集まっているという記事でした。私たち夫婦も首をすくめたものです。  というのも、産院からの二度目の「引き取り」通知で産院に出向いたからです。一度目の通知には「まあ、近々に」とのんびり構えていたところ、「引き取りがないことに驚いています。育児責任の放棄は許されません」といった文意の叱責の手紙、それが二度目の通知状なのですが、あわてて産院に駆けつけました。「こんな狭い部屋に未熟児を引き取るより、一日でも長く産院の専門育児室にいた方が、、、、」の逃げ腰だったのでしょう。
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最大の心配事、産院会計から診療費支払いの通知が送付されてきた時期とも重なりました。
家内の出産費は何とか払えるだろう、未熟児費用は見当もつかないが一体いくらくらいになるのだろう、が正直なところとでした。ところが、家内の出産・入院費がいくら、長男の特定集中治療費用がいくら、合わせていくら払え、の請求書ではありませんでした。SECURITE SOCIALE(セキュリテ・ソーシャル・略称SECUセキュ / 社会保障)の番号を至急に知らせよというものでした。健康保険を含む社会保険番号です。この公立産院の会計課は健康保険公庫との間で診療費を精算する方式をとっていることがわかりました。産院会計には診療費の処理上、SECU番号だけが必要なのでした。
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家内の出産はもとより、誕生後の子どもの育児や健康管理には、フランスの社会保険、通称セキュリテ・ソシャル(SECURITE SOCIALE)、略称セキュ(SECU)と呼ぶ公共保険に加入していないことには滞在生活は維持、継続できない、この程度の情報収集はしていました。もとより、初めての子どもが未熟児で出生するなど想定外のことでしたが。
それで、前年の1973年にはSECU(セキュ)加入を模索していたのです。この時期に分かっていたことは、ほぼ次のようなことでした。
①セキュ(SECU)は出産費用を100%カヴァーしてくれること。
②外国人(日本人)でセキュ(SECU)に加入していて出産した体験者からも取材しました。 周囲を見渡すと、自分も含め、滞在許可証、労働許可証を所持して会社に勤務している人のみがセキュ(SECU)に加入しているようだ。加入手続きは会社側が処理してくれたので加入登録窓口がどこなのかも判然としない。セキュ(SECU)保険料は毎月の給与から自動天引きされている。診療費の払い戻しは居住地区ごとに健康保険払い戻し事務所CPAM(CAISSE PRIMAIRE ASSURANCE MALADIE MATERNITE)がある。出産については同事務所で手続きをして出産手帳(CARNET DE MATERNITE)をもらった。その手帳に定期検診・検査票、入院票などが綴じ込まれていて、それを産院会計に提出してきた。検診・検査、入院・分娩などの費用は綴じ込み票の提出のみ。もっぱら産院会計と健康保険公庫との間の精算業務のようで、出産を終えて退院する際も会計窓口ではセキュ(SECU)でカヴァーされない雑費を支払っただけである。このようなことでした。
③僕のように、日本での蓄えを崩したり、日本に書き送った原稿料収入などによる送金生活者向けのセキュ(SECU)制度は存在していないようでした。(現在はCMU(COUVERTURE MALADIE UNIVERSELLE)という制度がありますが、これは2000年から始まった制度です)。ASSURANCE VOLONTAIRE(任意保険)という制度もあったのですが、市(MAIRIE)の生活相談課(ASSISTANCE SOCIALE)は教えてくれませんでした。後年に得た知識では、保険料が高いので,相談に応じてくれたASSISTANTE SOCIALE(相談員)が意図的に説明から除外したのかも知れません。
④学生についても調べました。大学生はフランス人、外国人を問わず28歳までは、学生保険機構(REGIME D’ETUDIANT DE SECURITE SOCIALE)があるようでした。僕も家内もフランスの大学に登録しているわけではないので該当しないのでした。                           
ここで、本題から外れるのですが、触れておきたいことがあります。自分に該当しないことは追求を止めてしまいがちだということです。例えば「学生保険について」の案内冊子を入手したとします。冒頭に「加入資格は28歳」とあります。僕は30歳だから該当しない、大学生でもない、これで終わり。その先は読まないのです。自分に該当しないことについて仏和辞書を引き引き挑戦する気にはなれません。そんな時間はない、になります。もう一歩踏み込んでいえば「読まない」ではなく「読めない」のではないでしょうか。仏和辞書を引き引き、その制度や仕組みをつかもうにも内容が読み取れない。逆説的にいえば、その制度や仕組みについてある程度の予備知識があれば「なるほど、そういうことか」になって読み取れる。こういう関係ではないでしょうか。これは一般的なことでもあり、僕自身のことでもあります。
さて、僕自身です。この時期に学生セキュ(SECU)について調べた際に、自分に該当しないことはすぐわかりました。それで終わりとしたのか、それでも一応は全体をつかんでおこうとしたのか、記憶が定かではありません。後で得た情報、後知識かもしれません。それはこういうことです。日本人の学生は「28歳以下でも学生セキュ(SECU)に加入できない」です(フランス政府給費留学生は特別加入出来たと記憶しています)。フランスと協定のあるヨーロッパ諸国、アフリカ諸国の学生が加入登録できるのでした。学生セキュ(SECU)は毎年9月新学期(RENTREE UNIVERSITAIRE)に、学籍登録の手続をする際にセキュ(SECU)保険料、ムチュエル(MUTUELLE)保険料の双方を払う方式です。学生セキュ(SECU)は80%カヴァー(当時。現在は70%)、ムチュエル(MUTUELLE)は補助保険で残りの20%カヴァー(当時。現在は30%)という仕組みでした。しかもです、この二つの保険料をMNEF(現在のLMDE)とかSMEREPとかの代行機関が徴収し、払い戻しもしている。こういう複雑な事情です。
日本人学生は学生セキュ(SECU)には加入できないので、MNEF(現在のLMDE)なりSMEREPなりにムチュエル(MUTUELLE)保険料のみを支払っているのですが、当人は学生セキュ(SECU)に加入しています、そう思い込んでいた日本人学生が多かったのではないでしょうか。
日本人学生がセキュ(SECU)の学生保険機構に加入できるようになったのは1988年からです。
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引き続き、僕自身そして僕たち夫婦のことに戻ります。不充分ながらもこうしたSECU事情の情報収集で得た結論は、家内が職についてSECUに加入する、でした。そのために前年の1973年秋口から動いていたのですが、その首尾を得ないまま早産になってしまったのでした。
2016年1月11日 記  岡本宏嗣
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