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「フランス/パリ滞在質問箱」に時折り割り込んで掲載(第22回)  私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」(第22章)

「フランス/パリ滞在質問箱」に時折り割り込んで掲載(第22回) 
私書函版「フランス/パリ・子育て雑記」(第22章)


雑感「フランス/パリ・子育て」の周辺(2)
=仕事も家庭も英語オンリーの息子たち=

社会人の息子二人は、仕事も家庭生活も英語です。
長男はロンドン在で、フランス系の会社に勤務していますが、職場は英語。嫁さんも英語人なので、家庭生活も英語です。   次男は中東在で、同じくフランス系の会社勤務ですが、職場は英語、嫁さんとの会話も英語です。
二人とも、パリ生まれで、学校教育は全てフランス語、全身これフランス語人ですが、 現在、日々の生活は英語なのですね。この英語生活が、二人とも かれこれ10年以上続いています。                            
長男、次男ともフランス系会社なので、職場にはフランス語人がチラホラいるようで、 彼らとは、職場外での会話はフランス語で話すこともある、といいます。フランス語とのお付き合いはそんな程度だといいます。
二人の英語力がどの程度のものなのかよくわかりませんが、一歩踏み込んで見ると、英語環境が違います。長男は「英語国」で生活しています。次男は「英語圏国」(ANGLOPHONE)での生活ですね。この違いはどうなのでしょうね。

それはさておき、全身これ日本語人の父親(僕です)と母親(家内です)には、息子たちの日々の生活がフランス語であろうが英語であろうが、その英語の舞台が「英語国」であろうが「英語圏国」であろうが、どうでもよいことで、大切なことは親子の会話が日本語でキチンと成立することです。もっとも、今となっては親子の会話といってもたまさかのことです。社会人となっている子たち、それも遠隔の地に生活しているのですから、連絡事項がほとんどです。夏休休暇に嫁さんを連れてパリに戻ってくるとか、何泊の予定なのか、とか。ノエル(クリスマス)は長男夫婦がいるロンドンに集合するか、それともパリに集合か、とか。(注1)
(注1)子どもたちの日本語学習、日本語習得については後章に回します。僕にとって、「子育て」の中心、核心に居座り続けているテーマで、厄介な問題です。

ところで、子たちにとって英語とは何なんだろう、フランス語人にとって英語とはどういうものなのだろう。こういう素朴な「問い」がここ10年くらい、時折り、頭に浮かぶのですね。
長男がANGLAIS(英語)を学校での学習教科として始めたのは中学校(COLLEGE/コレージュ)の1年目(日本の学制では小六相当)だったと思います。教科としてANGLAIS  (英語)が始るというので、僕はこんな無駄話をしたのを憶えています。この無駄話は面白かったようで、長男は後年、「憶えているよ、こんなハナシだろ」の反応があったものです。
無駄話のひとつはこうです。
「お父さんは、今は英語は全くダメだけども、中学、高校までは英語が得意だったんだ」と自讃しておいて、こう続きます。
「中学校でのある時の英語のテストで100点だったけど、模範解答として廊下の壁に貼り出されたんだ。ところが1か所、間違っているんだよ。先生、これ間違っているんじゃないですか、なんていい出す勇気も良心もない。中には、×点や空白だらけの自分の答案用紙を手にしてCORRIGER(誤りを直す)している生徒もいるんだ。まいったよ、早く引っ込めてもらいたくてね、ヒヤヒヤものだったよ」
無駄話のもうひとつはこうです。無駄話ですが教訓的ではあります。
「小学校6年の頃だったと思う。さるところで、さる先生のお説教だったんだけれどね。お父さんは今でも忘れていないんだ」。以上は前置き。
「英語の勉強を始めたばかりの中学生が電車の中だかバスの中で、いい年をした大人が英語の本を読んでいるのが目に入った。それとなく近づいて覗くと、自分が今学んでいる初級英語の教科書なんだね。いい年をした大人が、、と内心小バカにしたんです。それから1年後、また、電車の中だかバスの中でその大人に出会ったんです。驚いたことに、その人は分厚い英書を読んでいたのですね」

フランス政府による「外国語の侵食からフランス語を防衛する法律」がありました。ここで「外国語」とは主として「英語」を念頭に置いていることは言を俟ちません。
LOI RELATIVE A L’ENPLOI DE LA LANGUE FRANCAISEです。
1975年に出た法律は、フランス語に該当語がある場合は、広告宣伝、RADIO、TV、公文書などで、外国語を使ってはならない。RADIOで流す歌謡曲、音曲の類いはその 40%がフランス語でなければならない、といったものでした。
1994年にも出ています。通称LOI TOUBON(トュボン法)です。1975年のそれと
ほぼ同趣旨の「フランス語を英語の侵食から守れ」ですね。(注2)

(注2) 1989年にINSTITUT PASTEUR(パスツール研究所)の紀要が英語で刊行されることになりました。そこで登場したのが、その時期の文化・フランス語圏担当大臣JACQUES TOUBON(ジャック・トュボン1941-2009)の名を冠したLOI TOUBON(トュボン法)でした。国の助成金でなされた研究成果はフランス語で発表されねばならない、というものでした。これは、表現の自由を保障する憲法に違反するという判決が出て、骨抜きになったとされています。

いずれにしても、二人の息子の学齢期、フランスの文化・言語政策は、フランス語の防衛と英語の侵食阻止に熱心でした。
世界的な潮流となっている英語の一極集中に抗し、PLURILINGUISME(多言語主義)を言語政策として打ち出してきた時期でもありました。
英語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、アラブ語、ヘブライ語、ロシア語、、、、中国語、日本語などが一線に並び、英語は諸外国語のONE OF THEMという位置付けにしたのでした。こうした外国語事情でしたから、学校での英語教育には特別に力を入れていないのではないか、と踏んでいたものでした。息子たちは英語を外国語として選択していましたが、真剣に取り組んでいた姿を見たことがありませんでした。

これが大いなる読み違えであることがECOLE D’INGENIEURに入学してから分かりました。
よくいわれるように、英単語の6割はフランス語(ラテン語も含む)と重複しているので、僕たち非アルファベット語人とは学ぶ根本的姿勢が違うのでしょう。出来て当たり前、出来ない奴は置いてきぼり、が実情でした。政府の文化・言語政策がどうであれ、
GRANDES ECOLESでは英語力を厳しくチェックしているのでした。
長男は地質学・資源系のECOLE D’INGENIEUR(3年制、定員70名)したが、入学初年度は英語の成績順でクラス分けになったのでした。数学、物理・化学ではさしたる差が出ないという理由でした。
次男は水資源・環境工学のECOLE D’INGENIEUR(3年制、定員30名)でしたが、卒業までにTOEIC900点満点で785点以上取らないとINGENIEURのDIPLOMEが出ないということでした。(注3)
それで、「卒業までに785点以上取れなかった学生はいたのかい」と聞いたところ、 「一人いた」でした。アルザス地方出身の学生でCOLLEGE・LYCEE・PREPA(中学校4年・高校3年・プレパ2年)の9年間、一貫してドイツ語を第一外国語として学んで きたので英語力にハンディがあったといいます。他の生徒に一拍遅れたものの、無事、INGENIEURのDIPLOMEは取得できたそうですけれど、、、。
水資源・環境工学を学んだ次男から教わった英語のジョークがあります。フランス語でないところがミソですね。
ゴミ処理場、汚水処理場などの建設の際は、住民の反対が付きものです。
NIMBY、NIMEYというそうです。
NIMBYとは、NOT IN MY BACK YARD(私の家の裏庭には設置しないでくれ)
NIMEYとは、NOT IN MY ELECTION YEAR(私の選挙の年には設置しないでくれ)

(注3)既に触れた様にGRANDES ECOLES(グランゼコール)は、
①ECOLE D’INGENIEUR (技術系)②ECOLE DE COMMERCE(商業・ビジネス系) に大別されます。INGENIEURのDIPLOMEを出すことが認められいる学校が、GRANDES ECOLESの中のECOLE D’INGENIEURです。
ごくごく最近のことです。メトロ構内の壁面に大きなポスターが貼られていました。

Salon STUDYRAMA
 Grandes Ecoles
COMMERCE/MANAGEMENT/INGENIEURS
150 GRANDES ECOLES PRESENTES
Sam.9 et Dim. 10 novembre 2019  Event Center Porte de la Villette

STUDYRAMAという受験ビジネス会社の主催です。
150校のGRANDES ECOLES(商業系・マネージメント系・技術系)のブースがPorte de la VilletteのEvent Centerであなたをお待ちしていますよ、のポスターです。
この種のSALONは、これまではL’ETUDIANTという受験ビジネス会社が独占していましたが、STUDYRAMAが割り込んできました。フランスも受験教育ビジネスに競争が出てきましたね。

さて、英語のハナシでした。
日本では2020年から実施が決まっていた大学入学共通テストでの英語民間試験
が土壇場で見送りになり、かまびすしいですね。一方、英語の早期教育は202
0年より小3から必修化、小5,小6は教科化といいます。
こちらフランスでは英語の一極化現象へのレジスタンス、日本では「英語バスに乗
り遅れるな」。
そういえば、BREXITが実現したらEU本部機構内の膨大な事務処理はどうなるの
でしょうか。英語とフランス語が拮抗しているといいますが、この力関係に影響が
でるのでしょうか。                            そういえば、フランスの大学では、フランス国籍・EU加盟国籍以外の外国人学生の学費を大幅に引き上げました。奨学金制度や減額措置などいろいろあるのでしよ
うが、DECRET(政令)では、
LICENCE、(学士課程) 2770ユーロ(フランス国籍・EU加盟国籍学生180ユーロ)
MASTER(修士課程) 3770ユーロ (同 243ユーロ)

2018年までは同額で、両者間に差がなかったのです。2018年秋に格差料金制が決まったのでしたが、その際のある閣僚のコメントがふるっていましたね。
「英国がEUを出ていけば、英国の大学への留学生は大幅に減るだろう。フランスの大学が高く付くことになっても留学生は減らないハズだ。否、むしろ、増えるかもしれない」
                                  **
この章では、主として以下を参考にさせていただきました。
「あえて英語公用語論」 船橋 洋一      文春新書
「英語への旅」 ピュス・エルヌフ 内田謙二   影書房
「反=日本語論」 蓮実重彦           筑摩書房    
 (とりわけ、1章「滑稽さの彼岸に」)

  2019年11月  記  岡本宏嗣
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